大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(ツ)86号 判決

本件家屋とその南隣家屋とは、昭和二十二年春頃被上告人の夫小林和一郎において建築の上被上告人の所有とし、同人において南隣の家屋を古物営業の場所として使用し、本件家屋を上告人に賃貸し、上告人は昭和二十三年頃から本件家屋において玩具類の販売をしていた。昭和二十八年頃、被上告人の夫和一郎が自動車営業をなすために上告人から受領した四十数万円の金員の返還について問題がおこり、上告人は貸金であるとしてその返還を迫つたのに対し、被上告人の夫和一郎並びに被上告人等は、右は共同営業のための出資であるから返還する必要はないといつて、その間に紛争を生ずるに至つた。そこで上告人は、被上告人等から右金員を詐取されたものと深くうらみ、貸金返還の訴訟を提起するとともに、昭和二十八年秋頃から毎日のように南隣家屋の被上告人の店先において、上告人が上告論旨でいう所の面罵、罵倒行為をした。そして、その調子は激烈かつ露骨で、わざわざ被上告人の店頭に来て店内をのぞきながら、あるいは店内に一歩踏み入れてどなる有様であつた。このため、被上告人並びにその家族が著しい不快を感じ、恐怖したのみならず、古物営業は妨害され、その信用ないし名誉を侵害されている。かかる上告人の罵倒は少くとも昭和三十一年春までは継続した。以上は原判決が適法に確定した事実であつて、原裁判所は、右の如き事実から、被上告人としては、上告人と隣接して商売を続けることは感情的にも耐え難く、また顧客に対する信用を保つことも困難な状態にあつたと考えることができる。そこで被上告人が当時この状態を根絶するには、前記金銭関係についての全面的な解決の見透しがつかない以上、自らが他へ転居するか、本件家屋の賃貸借関係を断つ以外に途はなかつたものとして解約申入につき正当事由が存したものと判断したのであつて、「上告人が貸金上の争を本件賃貸借に持込んだといつて上告人の態度を責めている」のではない。

(奥田 岸上 下関)

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